君子(千葉早智子)が父親・俊作(丸山定夫)を東京へ戻そうと出かける長野県。
その具体的なロケ場所は不明だったが(なにしろ今からおよそ90年前の映画)今回またSさん(匿名希望)から貴重な情報と写真提供をしていただいた。
Sさんに感謝したい。
「成瀬巳喜男の設計」(中古智/蓮實重彦 筑摩書房 1990)のP75には、『妻よ薔薇のやうに』(上)伊豆ロケハンでの成瀬巳喜男の写真が掲載されている。
ロケ地は長野県(映画での設定)ではなく伊豆で撮影されたのかと思っていたが、実際に長野県で撮影されたようだ。
以下はSさんから送っていたたいだ画面写真、メール文章と写真と地図(グーグルストリートビュー、グーグル地図)を引用させてもらう(=◇)。
一部は管理者がアレンジ。
◇父からの手紙の住所を確認すると「長野県下高井群殿城村」と読める。
下高井群は実在するが、群下に殿城村は存在しなかった。
但し殿城村は小県郡にかつて存在した村で、現在の長野県上田市殿城地区と分かった。
◇ロケ地が上田市殿城地区だとすると後方に見える雪山は、左から南アルプス(甲斐駒ヶ岳等)、八ヶ岳、蓼科山である。
◇火の見櫓
◇大きな屋敷
◇君子(千葉早智子)とお雪(英百合子)の娘・静子(堀越節子)が共同湯に入るシーン。
直前のショット。後方に大きな旅館が映り、共同湯と思われる建物が右側に映る。
後方の旅館の看板を拡大すると 柏屋本店 と読める。
◇後方の旅館は『鶴八鶴次郎』(1938)にも登場する。
上田市殿城地区近くには温泉街はないので、近郊の有名な温泉地=別所温泉(長野県上田市)
あたりがロケ地ではと推測してストリートビューで確認。
柏屋本店は、「信州別所温泉かしわや本店」として別所温泉街に現存する。
近くには共同湯の別所温泉・大師湯がある。
二人が入浴したのはこの共同湯ではないか?
『鶴八鶴次郎』(1938)